最近では、インバウンドも多くなり旅行需要が伸びている傾向にありますが、一方で物価も上昇しているため、多くの宿泊施設が頭を悩ませているのではないでしょうか。
ホテルや旅館を経営する際、最も重要なのは『利益をどれだけ残せるか』という点です。
一日あたりの売上の上限が決まっている中で、利益率の計算や、利益を最大化するための戦略は、運営の成否に直結します。
ここでは、ホテルや旅館の利益率を計算する方法と、その利益を最大限に残すための方法について、詳しく解説していきます。

1.利益率の計算方式

まず、利益率とは「売上に対してどれだけ利益が出ているか」を示す指標です。
ホテルや旅館の利益率を計算するためには、以下の基本的な計算式を使います。

利益率(%)=利益÷売上×100

ここでの「利益」とは、通常、営業利益(税金や利息を差し引く前の利益)純利益(最終的な利益)を指します。

例えば、1泊あたりの宿泊料金が10,000円で1日100室が稼働しているとしましょう。
この場合、1日の売上は10,000×100室=1,000,000円(100万円)となります。

次にコストがかかります。
コストには大きく分けて、変動費(人件費、食材費、光熱費など)固定費(設備維持費、宣伝費など)があります。
仮に、このホテルの1日のコストが700,000円だとします。
この場合、利益は売上からコストを引いた額、つまり1,000,000-700,000=300,000円となります。

この場合の利益率は、300,000円÷1,000,000円×100=30%となります。

2.利益を最大限に残すための方法

ホテル・旅館の運営において、安定した経営を実現するためには、高い利益率を維持することが不可欠です。
利益率が高いほど、運営の安定性が増し、将来への投資も可能となります。
では、どのようにして利益を最大限に残すことができるのでしょうか?ここではいくつかのポイントをご紹介いたします。

⑴価格設定の最適化
利益を上げるために最も直接的なのは、価格設定です。
単なる料金設定ではなく、データに基づいた戦略的な価格設定が重要で、価格を上げるだけではなく、需要と供給のバランスを考慮することが大切です。
繁忙期には料金を少し高めに設定し、閑散期には割引を実施することで、収益の最大化を目指します。

また、価格を決める上で、1人あたりのコストを算出した上で利益をどのくららい残すべきか、1人あたりにかけられる販促費などを踏まえた上で、価格も決めていくと良いです。

また、ダイナミックプライシング(需要に応じて価格を変動させる戦略)を採用することも、利益の向上に効果的です。
最近では、AIを活用した価格調整ツールも増えてきており、これを使うことでリアルタイムの需要変動に合わせて自動的に価格を調整します。
機械学習を活用し、過去のデータから最適な価格パターンを学習させ、より高度な価格戦略を実現することができます。

▼ダイナミックプライシングについてはこちら

⑵コスト削減と効率化
利益を最大化するためには、コストの削減も欠かせません。
特に、変動費の管理が大切です。
例えば、エネルギーの無駄を減らすために、照明や空調の使用を最適化したり、従業員の労働時間を見直して効率的に働けるような体制を整えたりするなど、エネルギー消費量や設備の稼働状況を可視化することが重要です。

また、仕入れの見直しも有効です。
食材やアメニティ、消耗品など、複数の仕入れ先を比較検討し、品質と価格のバランスが取れた最適な仕入れ先を選定することで、コスト削減にもつながります。
無駄を徹底的に排除し、効率的な運営体制を構築します。

▼コストを下げて利益を残す方法はこちらもご参照ください。

⑶客室稼働率の向上
利益率を上げるためには、稼働率を高く保つことも必要です。
稼働率が高ければ、高い利益を上げることができます。
これを実現するためには、宿泊客のニーズに応じたサービスを提供することが大切です。

▼客室稼働率についてさらに詳しく見たい方はこちら

例えば、季節ごとの特別プランを作成したり、長期滞在の割引プランを提供したりすることで、集客力を高めることができます。
また、オンライン予約サイト(OTA)を活用することも集客には欠かせません。
OTAやSNSのレビューを積極的に収集・分析し、顧客満足度の向上に繋げます。
高評価のレビューを積極的に発信し、施設の評価を高めることが、集客力を高めるために非常に有効です。

⑷付加価値サービスの提供
利益を増やすために、宿泊料以外の収益源を確保することも重要です。
付加価値サービスを提供することで、宿泊客により多くの選択肢を提供し、追加収益を得ることができます。

例えば、レストランやカフェ、スパ、観光ツアー、地域の文化や自然を体験できるアクティビティの提供などが考えられます。
ワークショップやイベントを開催し、顧客との交流を深めることもできます。
これらのサービスを上手く組み合わせることで、宿泊料以外でも利益を得ることができます。

⑸顧客満足度を高める
最後に、顧客満足度を高めることは、リピーターを増やすために非常に重要で、長期的な収益を確保するために最も重要な要素の一つです。

顧客満足度を向上させるためには、顧客の声に耳を傾け、アンケートやレビューを分析し、顧客のニーズや不満点を把握します。
パーソナライズされたサービスで、迅速かつ丁寧に対応し、信頼関係を築きます。
小さなことでもお客様に喜んでもらえるような工夫をすることで、リピーターが増え、安定した収益を得ることができます。
従業員の意見を積極的に取り入れ、風通しの良い職場環境を作るなど、従業員満足度を高め、組織全体のパフォーマンスを向上させます。

▼リピーターを増やすメリットについて

まとめ

宿泊業界は、常に変化しています。
テクノロジーの進化、顧客ニーズの多様化、競合施設の増加など、経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。

ホテルや旅館の利益率を最大化するためには、価格設定やコスト管理、サービスの向上が必要不可欠です。
また、稼働率を高めるために、季節ごとの特別プランや付加価値サービスの導入などを行なうことも、重要な戦略となります。

利益率を上げるためには、運営の効率化とお客様のニーズをしっかりと把握し、柔軟に対応することが求められます。
これらの方法を実施し、利益を最大限に残すことができるよう、是非参考にしてみてください。

弊社では、宿泊施設様の状況に合わせて利益を最大限に残せるよう、施策を考え実行しております。お気軽にご相談ください。