「ChatGPTやGemini、Claudeって最近よく聞くけど、うちの宿の仕事に使えるの?」

そう感じている宿泊事業者の方は、少なくないと思います。生成AIという言葉は知っている、少し触ってみたこともある。でも毎日の業務とどう結びつくのか、イメージが湧かない。

この記事では、生成AIを「何に使うか」という目的ベースで、宿泊業に携わる方に向けてやさしく解説します。むずかしいスペック比較ではなく、「こんな場面で使える」という具体的なシーンで選べるようにまとめました。

生成AIをうまく活用している宿泊施設では、実際にメール対応や翻訳作業の時間を大幅に削減できています。まずは自分の宿に合った使い方を見つけることが、最初の一歩です。

宿泊業でよくある「3つの困りごと」

生成AIに興味はあっても、なかなか一歩が踏み出せない。その背景には、こんな日常の悩みがあるのではないでしょうか。

① お客様へのメール返信に時間がかかる

問い合わせや予約確認のメール、チェックイン前の案内文。毎回1から文章を考えるのは、思った以上に時間と体力を使います。繁忙期には深夜まで対応が続くこともあります。

② SNSの投稿が続かない

「発信しなければ」と分かっていても、何を書けばいいか思い浮かばない。写真は撮れても文章が出てこない。気づけば更新が止まっている、という経験はないでしょうか。

③ 外国人ゲストへの英語対応が不安

インバウンドのお客様が増える中、英語のメールや問い合わせへの返信に自信が持てない。Google翻訳を使ってみても、これで合っているのか確信が持てないまま送っている。

この3つの困りごと、実は生成AIが最も得意とする領域と重なっています。次の章では、それぞれの悩みにどのAIが向いているかを具体的に解説します。

悩み別・最適なAIはこれだ

悩み① メール返信の品質と時間を解決するなら「Claude」

お客様への丁寧なメール返信に向いている生成AIは、Claude(クロード)です。

Claudeは3つの生成AIの中で、日本語の自然さと敬語表現の精度が最も高いと評価されています。「おもてなし」の気持ちが伝わる文体や、お客様との関係性に合わせたトーンの調整が得意です。「AIが書いた感じがしない」という声が多く、ビジネスメールにそのまま使えるレベルの文章が出やすいのが特徴です。

実際に、星野リゾートでは生成AIをメール返信業務に導入し、入社間もない新人スタッフが短期間でベテランと同等の対応件数を達成したという事例があります。

使い方のイメージ
「チェックイン時間を確認するお客様へ、丁寧に案内するメールを書いてください」と入力するだけで、下書きが完成します。あとは内容を確認して、自分の言葉に少し整えて送るだけです。

悩み② SNSの投稿を続けるなら「ChatGPT」→「Claude」の2段階

SNS運用に生成AIを活用するなら、ChatGPTでアイデアを出し、Claudeで文章を仕上げるという2段階の使い方がおすすめです。

ただし、いきなりネタを聞く前にまず自分の宿のことをAIに覚えさせることが大切です。

田中からのワンポイントアドバイス!
たとえばこんな情報を最初に入力しておきます。
宿の名前・コンセプト・強みやウリ・周辺の観光スポット・季節のイベント
どんなお客様がリピーターなのか。どんなお客様に来て欲しいかなど…これをベースにChatGPTへ「秋の紅葉シーズンに合わせたInstagramの投稿ネタを10個出して」と入力すると、自分の宿らしいアイデアが出やすくなります。その中から気に入ったテーマをClaudeに渡し、「このネタで温かみのある投稿文を書いて」と依頼すると、読者の心に刺さりやすい文章に仕上がります。思ったような言葉が出てこない場合は、複数パターンを依頼してみて下さい。なぜ複数パターンかはまた別の会で解説します。

ただし、自分がこだわりたいSNS投稿は、自分の言葉で書いた方がいい場面もあります。気持ちが乗った文章は読んでいる人に伝わるからです。生成AIは「ネタが思い浮かばないとき」「時間がないとき」のサポート役として使うのが自然な活用法です。AIは処理能力は高いが、情緒的な要素は得意ではないからです。

悩み③ 外国人ゲストへの英語対応なら「ChatGPT」

多言語対応・英語のメール作成に最も実績が豊富な生成AIはChatGPTです。

ChatGPTは英語をはじめ80以上の言語に対応しており、翻訳の品質と自然さが3社の中で特に高く評価されています。高級宿泊予約サイトの一休.comが複数の翻訳サービスを比較検証した結果、ChatGPT 4oが最も高い品質を示したという実績もあります。

城崎温泉の老舗旅館・西村屋では、生成AIの活用で翻訳作業の時間を大幅に短縮(20分以上かかっていた作業が約7分に)。スタッフの負担を大幅に減らしながら、「自然で違和感のない英語表現」を実現しています。

使い方のイメージ
「以下の日本語のメールを、外国人ゲストに失礼のない丁寧な英語に翻訳してください」と入力するだけです。Google翻訳より自然な英語になることが多く、返信のスピードと品質が同時に上がります。

3つの生成AI、何が違うの?
ここまでの内容を、シンプルな表で整理します。

 

業務で使うなら、有料のビジネスプランを選びましょう。

無料版や個人向けプランでは、入力した情報がAIの学習データとして使われる可能性があります。情報を入力する場合は、データが学習に使われないプランを選ぶことが大切です。

スタッフの人数が多い施設には、Google Workspace経由でGeminiを使う方法がコスト面でもおすすめです。すでにGmailやGoogleドライブを使っている場合は、そのまま移行しやすいメリットもあります。

ただし、3つのAIの価格帯はそれほど大きな差はありませんし、機能面も随時アップデートしているのでそこまで差はありません。まずは無料プランで実際に触ってみて、使いやすいと感じたものを有料プランに切り替えるというステップが、一番失敗が少ない始め方です。

最初の一歩の踏み出し方
「どのAIを使えばいいか分かった。でも、何から始めればいいか分からない。」

そう感じる方は多いです。生成AIを使いこなそうと意気込んで、一度に色々試そうとすると続きません。

おすすめは、まず1つの業務だけに絞ること。

たとえば「今週のお客様への案内メールをClaudeに下書きさせてみる」だけでいいです。それだけで、生成AIがどんなものか体感できます。慣れてきたら少しずつ使う場面を広げていけば十分です。

最初は無料プランで試してみて、「これは使える」と感じたら有料プランに切り替える。そのくらいのペースで、気軽に始めてみてください。

まとめ:AIは処理を、人間は判断を

生成AIを使いこなすコツは、「どれが最強か」を探すことではありません。AIはあくまでツールであって「自分の宿の、どの業務に使うか」目的を決めることです。

AIは処理や作業を高速でこなすことが得意です。しかし、生成された文章を送っていいか判断すること、SNS投稿が自分の宿のブランドに合っているか確認すること、翻訳内容に間違いがないか最終チェックすること、こうした判断・意思決定・リスク管理は、必ず人間が行う必要があります。

また、「自分がこだわりたいこと」は人の手でやった方がいい場面もあります。たとえばSNSの文章を自分で考えたいなら、それでいい。気持ちが乗った言葉は、読んでいる人にちゃんと伝わります。

「自分がやらなくても大丈夫」と思える作業から、少しずつAIに任せてみる。メールの下書き、翻訳、定型文の作成など、まず1つだけ試してみることが最初の一歩です。

生成AIの活用について「何から始めればいいか分からない」「自分の宿に合った使い方を相談したい」という方は、タビーロードにお気軽にご相談ください。

参考文献
星野リゾート、メール業務に生成AI活用 “脱・属人化”で新人を即戦力に」ITmedia AI+(2024年8月6日)
一休.comの多言語対応」一休.com Developers Blog(2025年5月30日)
使うほどにアイデアが広がるホテル・旅館での生成AI活用4事例」NTT OPEN HUB(2025年)